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アイルランドの床屋さん

2019.11.06 22:53|アイルランド的生活
12歳になる息子のショーンは、2年ほど前から床屋さんに行くようになりました。それまでは自宅でパットさんがショーンのヘアカットを担当していたのですが、「ほかの子たちと違う」だの「長すぎる」だのと不平を言うようになり、髪を切る日になると必ずと言っていいほど親子でけんかモードです。

仕方なく、親しくしているママ友さんに「ねえ、近くでおすすめの理髪店があったら教えてくれない?」と訊いてみると、「エニスに行けば、腕のいいバーバーがいくつかあるわよ」ということで、2軒ほど名前を教えてもらいました。

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そのうちの一つはどうやらエニスの町に入っていく途中にあるらしい。それなら便利だわという理由でここに入店して以来、ショーンも気に入り、ずっと通い続けています。
町中から少し離れた住宅街の近くにあるこの床屋さん、その名もハウス・オブ・ハンサム(House of Handsome ハンサムくんの家)。

ここは美容院ではありません。男性向けの小ぢんまりとした理髪店で、私たちが行く土曜日にはたいてい2人の若い男性スタッフが働いています。日曜日と月曜日はお休み。シャンプー台はなく、あくまで髪の毛(と、成人男性の場合はひげ)を切るのが彼らの仕事。良い意味で、シンプル極まりないビジネスです。
事前予約は一切なく、入店した順番で切ってくれるのもいたって合理的。

ショーンのヘアカットを担当してくれるのは、両腕に大きなタトゥーの入ったこわもての大柄な男性です。ぱつんぱつんのTシャツにスキニージーンズ、一見ぶっきらぼうですが、初めて入った時にはショーンと一緒に私のことも呼んでくれ、「頭のぐるりはこのぐらいの短さかなと思うんだけど、いいですか。てっぺんの髪の毛はこうやって切って、前髪は横に流す感じを考えてますけど」と、とてもていねいに説明をしてくれました。

ものの15分ほどで見事にヘアカットを仕上げると、ドライヤーとワックスを使ってきれいに髪を整えてくれます。さすがプロ!これで10ユーロなり。支払いを済ませると、「ロリポップ(小ぶりの棒付きキャンディー)ほしい?ほら、そこに座ってる君の姉ちゃんにも1個」と言って透明の大きなコンテナから手渡してくれるのがお決まりです。

最初の頃は会話なし。ショーンは黙りこくり、理髪師くんは黙々と散髪に専念。しかし何度か通ううちに「今日はどこの学校に行ってるのか訊かれた」「ハーリングはするのか、って訊かれた」など少しずつ話すようになってきたようです。
今では顔をおぼえてくれているので、相変わらず笑顔はありませんが、あごをしゃくって「ほら、君の番だよ、こっちに来いよ」サインをよこすようになりました。それに従い、しなしなと理髪師くんのもとへ歩いていくショーンの後ろ姿。まだまだかわいいなあ。

ある時などは理髪師くんのお友だちと思しきメンバーが2~3人ぞろぞろと店に入ってきたかと思うと、コカ・コーラのペットボトルなどを飲みながら窓際に腰かけて仕事中の理髪師くんとおしゃべり。エニスのサッカークラブの話、昨夜みんなでディスコに飲みに行って誰がどうした、などという話を楽しそうにしています。髪を切られているお客さんももう一人の男性スタッフも、気にかける風はありません。節操のあるお友だちは長居せず、しばらくすると「じゃーねー」と去っていきました。
お堅いことは言いっこなし。誰に迷惑をかけているでもなし、何より仕事はきちんとこなすので誰も文句は言わないのですね。

床に散乱した髪の毛は、ヘアドライヤーで適当にぶぅんぶぅんと店の隅っこに飛ばしたり、足で蹴って脇にまとめ、あとで処分する様子。お店全体は明るく清潔だし、大ざっぱだけどこれもよし。

ハウス・オブ・ハンサムには、お母さんに手を引かれた2歳か3歳ぐらいの小さな男の子から年輩の男性まで、あらゆる年齢層が髪を切ってもらいにやってきます。ほとんどみんな常連客らしく、親しげにずっとおしゃべりをしていることも。客足が途絶える様子はありません。繁盛しているのです。

サービスを受ける時というのは、改まった接客をされればされるほど私などは身構えてしまいがち。かえってこの放ったらかし加減がとても開放的で快適に感じます。シンプルによい仕事をしてくれれば、お客さんも気持ちがいいもの。マニュアル第一のごとく、歯の浮くような会話を強要されるほど苦痛なことはありません。

好きだなあ、この自然なスタイル。

世の中には、無駄なサービス、なくなったほうがいいサービスがきっとたくさんあるんだろうな・・。それに費やすお金と時間と労力。

効率よくいい仕事をするって、どういうことなんだろう。

理髪師くんたちの仕事ぶりを何気なく眺めながら、そんなことを考えてしまうのでした。

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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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