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どうする、どうなる、アイルランドの中絶禁止法

アイルランドで、来週また新たな国民投票が行われます。
アイルランドの国民投票といえば、前回の同性婚合法化の是非が問われた投票がまだ記憶に新しいかもしれません。しかし今回の国民投票へ向けたキャンペーンは、前回の投票とは正直比較にならないほど切迫、緊迫しており、多くの国民が当事者意識を持って臨んでいる空気があります。アイルランド国民にとって、より身近な問題を問う投票だからです。

来週の国民投票は、現存の人工妊娠中絶禁止法の廃止をめぐる「Yes」か「No」かの投票です。

日本でも一部報道されているかもしれませんが、アイルランドの中絶禁止法の歴史と現状をかいつまんでご紹介します。

アイルランドでは、1983年にもこの法についての国民投票が実施されています。
当時の投票では、母親と(まだ生まれていない)胎児の生命は同等であり、同等の生存権を持つということを国民が認める結果となりました。80年代のアイルランドといえば今よりもずっと宗教色が強かったでしょうし、中絶を殺人とするカトリックの教えがそのまま反映された形です。

この法には例外や特例は一切明記されていませんでした。妊娠した女性は、どんな状況であれ出産しなければならない。それでも中絶を希望する女性たちが後を絶たず、彼女たちに唯一残された選択は主にイングランドなど海外に渡航し中絶手術を受けることでした。今現在でも、こうした女性が年間数千人はいるとされています。

中絶禁止法首相
(廃止派のキャンペーンをするヴァラッカー首相)

これが2013年、初めて人工妊娠中絶の一部が合法化されました。
きっかけは、ある一人の女性の死でした。
ゴールウェイ在住でインド出身のサヴィータさんの妊娠は、死との向かい合わせでした。流産しかかっているとして医師に中絶を求めたサヴィータさんとそのパートナーはこれを拒否され、サヴィータさんはその後敗血症により死亡したのです。
これを機に、母体の命が危険な状態にある場合に限り、人工妊娠中絶を認める法案が可決されました。
たった5年前のことです。

妊娠する女性たちの中には、非常に難しい状況に置かれた人たちも少なくありません。例えば性犯罪被害により妊娠を余儀なくされる女性。また検査の結果明らかに胎児に異常が見られ、生まれても生存する可能性が低いと告げられた女性。こうしたケースでも、中絶という選択が認められていないのが今の中絶禁止法です。

今回の新法案では、希望があれば妊娠12週目までの中絶を無条件に認め、特別な場合に限っては12週目以後も可能とする、としています。つまり、望まない妊娠であれば誰でも中絶手術を国内で受けられるようになるわけです。

中絶禁止法廃止派

日本をはじめ多くの国、ヨーロッパ諸国でも中絶は認められ「産むか産まないか」という選択はその女性の判断にゆだねられています。
産むのはその女性なのだからそんなの当たり前だ、と言ってしまえばその通りかもしれません。母体は彼女のものであるし、彼女が妊娠をし出産をするのだから、当然ではないか。
女性たち各々の決定を国が信頼し、尊重する社会として中絶を認めるべきであるというのが廃止派(Yes派)の主張です。

一方で維持派(No派)は、お腹の中のもの言わぬ胎児の生きる権利を訴えます。女性の権利という名のもとに、生まれてくる子どもの権利を奪うことは間違っている。
いかなる理由により、この世に生まれてくるはずの新しい命を絶つこと。カトリックの国だからという宗教の話ではなく人間の倫理として、これはしていいことなのでしょうか。仕方がないと諦めていい事柄なのでしょうか。

中絶禁止法維持派

いろいろ調べてみると、今でも中絶を禁止している国というのはアイルランドに限らず世界にいくつもあるのですね。法整備が進んだのも近年に入ってからの国が多く、全面的には禁止をうたっても数々の例外を認めるなど、どの国も慎重に扱っていることがうかがえます。

10代で妊娠し、望まない妊娠ではあったけれど出産して育て、苦労もしたけれど産んでよかった、育ててよかった、という人を知っています。
涙の中、イングランドに渡り中絶手術を受け、孤独で悲しく心の傷は負ったけれど、あの時の決心に悔いはないという人も知っています。
どちらのストーリーも分かる。
どちらに投票したとしても、必ず誰かが置き去りにになる。正解のない、非常に悩ましい選択です。

アイルランドという国が、この国の社会として生命をどうとらえるのか。
そして、女性の権利とは何なのか。

中絶が国内で可能になれば、今よりも中絶する女性が増えるのは目に見えています。
命がないがしろにされる社会は嫌です。女性が負担を強いられる社会も嫌です。

難題を突き付けられ、投票1週間前となった今でも葛藤の中にいる国民は多いのではないでしょうか。

投票は来週の金曜日。
一体どんな結果が待ち受けているのでしょう。アイルランド社会は変わるのでしょうか。
息を呑みながら見守っています。

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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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