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夫は生粋のエニス人

2018.02.03 02:36|アイルランド人
夫のパットさんはエニスという町の出身です。エニス(Ennis)はアイルランド西部のクレア州(County Clare)にあって、この州の中では最も大きいいわゆる州都と言われる町です。といっても都市(City)ではなく大きな町(Town)ですね。バスや電車など主要な交通機関は通っているけれど、ショッピングセンターもなければデパートもありません。エスカレーターのある建物は町に一つ。一日あれば歩いて全部回れてしまう、ちょうどいい大きさの町です。

私たちはこのエニスの町から車で30分ほど東に出たところにある村に暮らしています。エニスの町はパットさんの実家もあるし、パットさんの働くミュージックショップも町中にあるので、毎週往復している最も身近な町です。

エニスの町

パットと一緒に町を歩くと、庶民の町としてのエニスの表情が見えてきます。パットは生まれも育ちもエニス、生粋のエニス人なのでまず知り合いに会わないことがありません。歩いているとすれ違う人すれ違う人と「Hello」、「How's it going」と声をかけ合います。「今のはマイケル。学校が一緒だったから」「さっきのはセリーン。昔同じ職場で働いてたんだよ」という具合ですね。

新しいお店の数々が並ぶストリートも、どのブロックを誰が所有してるとか、どの家族が誰に売った、ここは昔仕立て屋だった、このブティックのオーナーの弟はアメリカで教授になっててコンサーティーナを弾く、こことここのオーナーは昔こういうことがあって仲が悪い、などなど、町の隅々までを知り尽くしています。
エニスの実家ではパットの母、弟たち、甥っ子などが出入りするたびにローカル情報が飛び交います。
エニスの町の冠婚葬祭情報はもちろんのこと、町の変化、人や家族の噂話などタウンに関するあらゆる情報を網羅しているようです。
「フェアグリーンのフォックス家のお母さん、今入院してるんだってよ」「あ、聞いた、オーストラリアに住んでる息子が今それで帰ってきてるでしょ」とか、「マリオンアヴェニューのマーク・ライアン覚えてる?ずっとアルコール中毒だったけど今リムリックの施設で療養してるんだって」「そうなの~、でもあれは父親の影響だよ、覚えてる?ドミニク。昔は荒れ放題だったからねえ」

町中のパブは観光客向けに商売をしているところが多いですが、一方で地元の人しか行かない、ローカル色の強いパブもしっかり残っています。その一つのパブに最近顔を出すようになったパットさん。
「ギネスが格別においしいんだよ。町の中でナンバーワンかも・・」と目を輝かせるパットさん。
でもこのパブに足しげく通う理由はもう一つあるようです。
「このパブに行くとさ、みんなエニスの連中なんだよ。僕も彼らがどこの誰か知ってるし、彼らも僕のこと、僕の家族のこと、みーんな知ってるんだよね。やっぱりエニスは僕の町だからさ、なんかこう・・妙に落ち着くんだよね」

普段は保守的なことをめったに言わないパットさんですが、ホームタウンとはそういうものなのでしょう。
例え大人になってから同じ場所に20年、30年住んでも同じ結果は決して得られません。それどころかいつまでたってもよそ者なんですね。同じ州の出身であっても、同じアイルランド人であっても、その地元の人たちの目に見えない輪の中に入れてもらえることはありません。「地元の人」というのはそういうものなのですね。

もう長いことダブリンに暮らすマイクという名のパットの友人がいます。この人もまた生まれも育ちもエニスの人、パットとは小学校時代の同級生です。
マイクが遊びに来ると、二人のエニス人は町のことをずっとしゃべっています。あの人がどうした、この店がどうなる、昔はこうだったといったことを、いつまでも。何時間でもしゃべっています。

まあ、マイクが寝る時しか口が止まらないほどのおしゃべりということもあるのでしょうが、同じ町で生まれ育った切っても切れない絆というのか、強い仲間意識があるのですね。

これこそ真の町の人。生粋のエニス人。

エニスの町を歩いているとさまざまな言語が聞こえてきます。
イングランド人、アメリカ人、アフリカ系移民の人たち、ポーランドなど東ヨーロッパの人たち。はたまたダブリン人、北アイルランド人、リムリックやティペラリーといった隣州の人たち。アイルランドの同じ規模かそれ以上の町はどこもそうかと思いますが、とてもコスモポリタンです。

でも、どんな町にも村にも本当の「地元の人たち」がいる。マイクとパットの会話を傍らで聞いていると、この町はエニスの町の人たちが所有しているような錯覚に陥ります。この人たちの存在なくして勝手にこの町を語れないというような、よそ者の想像を超える彼らのホームへの愛着を感じるのです。

地元意識の強いことで知られるアイルランド人。
きっとこれが、アイデンティティーというものなのでしょうね。

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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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