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地域コミュニティーの力

2017.12.14 23:50|地域コミュニティー
実に悲しい出来事がありました。
私の暮らす地域のある女性が、不慮の事故で突然亡くなったのです。21歳。新卒で9月から仕事をはじめた矢先のことでした。

彼女には音楽を通して一度会っただけでしたが、ご両親のことは昔から比較的よく知っています。特に彼女のお母さんとは事故のつい数日前にメッセージのやりとりをしたばかり、私にとってもひどく衝撃的な知らせでした。

お葬式は週末とのことです。
アイルランドの田舎では、お葬式は通常2日間にわたって行われます。1日目は日本のお通夜に近いもので、これは地域の葬儀屋が営む施設を借りることもありますが、たいていはその遺族の個人宅で行われます。
そしてその翌日の午前中に教会にて司祭によるミサ、つまり葬儀が行われ、数々のお祈りが唱えられます。ミサのあとは墓地に移動し、ここで死者に永遠の別れを告げるのです。

地域コミュニティーの強いアイルランドでは、行かねばならないお葬式が実に多いです。
直接は知らない人であっても、知っている人の家族であれば「行かなきゃ」となります。
特に若い人の死や不慮の事故死の場合は、遺族に対するリスペクトとシンパシーを表しようと多くの人が訪れるため葬儀が大きくなります。
今回も悲劇的な若い女性の死であったため、「これは大きい葬式になるぞ」ということはみんな分かっていました。

夫と二人でお通夜に向かうと、彼らの自宅に折れる道にパトカーが停まっています。車の窓を開けると警察官と一緒にいた地元民らしき男性が「Tony Mac's(近くのパブ兼お店)が駐車場になってるから、そこから出るバスを利用してくれる?」と教えてくれました。
駐車場には、複数のこれまた地元の男性たちが小雨の中、車の誘導員として働いていました。

バスは東クレアが誇る非営利団体クレアバス。
通夜の行われる彼らの家の前には長い長い人の列ができています。
既に夕闇の迫りつつある湖畔の家。体が芯から冷えるさびしい夕暮れ。おしゃべりをする声も少なく、皆が下を向き少しずつ進みます。
棺と遺族のいるテントにたどり着くまで40分はあったのでしょうか。並んでいる間、もう5時になろうという時刻なのに足元が明るいことに気がつきました。見上げると屋外用の大型照明が設置されています。

Lough Graney 2

雨足が強くなってくると、傘を何本も持った男性が現れて人々に傘をオファーしています。
もう一つのテントでは遺族へのあいさつを終えた人々のためにコーヒーと紅茶があてがわれ、女性たちが忙しそうに立ち働いているのが見えます。

この日のお通夜のために働いていた多くの人々は、そう、すべて地域の人々。地元の人たちです。
あとから聞いた話では、遺族がフランスから戻ると同時に地元の人の呼びかけで葬儀のためのミーティングが開かれ、40人の地域住民が集まったのだそう。駐車場の確保、送迎バス、誘導員の配備、仮設テント、大型照明、屋外用ストーブ、仮設トイレ、客人へのコーヒー、紅茶、ビスケットの手配、雨が降った場合の傘といった細やかな配慮まで、地元住民による徹底したオーガナイズがされていたのでした。もちろん無償のボランティアです。

自治会でも役場でもなく、はたまた葬儀屋でもなく、地域コミュニティーが支えるアイルランドの田舎のお葬式。娘さんの死に直面し、絶望的な状況に置かれたこの家族を、地域コミュニティーの力がしっかりと包み込んでいる。そんな葬儀でした。
この日のお通夜は7時間以上人の列が途絶えることがなかったそうです。

いつになく悲しいお葬式で辛かったですが、同時に改めてこの国の底力を見た日でした。

望月えりか @Twitter (心に浮かんだこと、何気ない出来事や印象に残った瞬間を言葉にしています)
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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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