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パブで学ぶ愛。愛の話

2018.04.24 00:19|豊かな暮らしを考える
私の知っていた女性が突然亡くなりました。
日本に暮らしていた頃にアイルランド音楽を通して何度かお会いしましたが、友人と言えるような親しい間柄ではありませんでした。アイルランド不定期便をいつも熱心に読んでくださり、日本で知り合いだった頃よりもインターネットを通しての交流で彼女のことをより知るようになった気がします。
知らせを読んだ時には頭が真っ白になりました。
急死されたその日にも、私のところには彼女からのコメントが寄せられていました。人の死は時にこんなにも突然にやって来るものなのでしょうか。死を予期せず明日の予定もあっただろう彼女とパートナーの彼、そしてご家族の皆さんを思うと不憫でならず、今でもほろほろと涙があふれてしまうのです。
どうぞ安らかに。どうか安らかに。

今日は、愛の話をしたいと思います。

気が向くと、音楽セッションを楽しむために村のパブに行きます。マーティンは、このパブによくお酒を飲みに来ています。
飲み物を頼んでいる時にたまたま横にいたのをきっかけに、初めて言葉を交わしました。
私はマーティンを知らなかったけれどマーティンは私がどこの誰だかを知っていて、15年前に亡くなった共通の知人の話などをしていました。優しく穏やかな紳士です。
しばらくすると、マーティンがこんなことを言います。

「どうだろう、君は私の妻を知っていたかな。どうだろう。素晴らしい女性だったんだ。うん、おととし亡くなってね。癌だった。分かった時はもう遅くてね。私の知っている中で最も美しい女性だった。明るくてね。どうだろう。君は彼女に会ったことがあったのかな」

「さあ、どうでしょう。あなたのことも今知ったばかりだから」と答えると、

「うんうん。そうだよね、それもそうだ。でね、これが彼女なんだよ」と言ってマーティンはパンツのポケットから祈りのカードを一枚取り出し、そこに写った亡き奥さまの写真を見せてくれました。

アイルランドでは人が亡くなると、故人の写真が載った祈りのカードを葬儀に来てくれた人々に渡すのが風習です。

マーティンがカードをポケットから出した際の手の動きから、私と話している間もずっとポケットの中の写真をにぎりしめていたことがことが分かります。

桜の木2017 (4)

あとから親しい友人とマーティンの話をしていると「彼はね、いつも誰にでもそうなのよ」と言います。

新しい誰かに会うと、その人が奥さまを知っていたかどうかさり気なく訊ねるのだそうです。
まるで亡くなった奥さまの記憶を記録し直すかのように、2年経った今でも自分の知らない人と彼女とのコネクションを探し求めるマーティン。

「最期まで彼女の世話を自宅でして、看取ったのも彼だったのね。彼女への愛情がすごく深かったから、残されたマーティンはかわいそうでね。周りの人たちも辛くなるほどだったって」

「今年に入ってからだよ、マーティンが再びパブに出てくるようになったのは。少しずつ社交もし始めて、彼にとってもいいことよね」

泉から湧き出る水のように途絶えることのないマーティンの亡き奥さまへの愛は、誰も侵すことのできない神聖なものです。
愛する者を失ったら、人は時にこんなにも弱くなっていいし、周りはそんな弱い人をここまで優しく見守っていていい。
あたたかい社会だなと思いました。

我が家の庭にある日本の桜が今満開です。さまざまな思いを胸にまだ小ぶりなこの木の下に立ち、今日も花を見上げます。

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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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