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アイルランドの大飢饉の原因、ブライト

2014.07.25 09:42|アイルランドで畑仕事
1800年代中頃に、アイルランドの歴史に残る大惨劇がありました。
大飢饉です。
日本語では「ジャガイモ飢饉」という名で知られているようですが、アイルランドでは単に「大飢饉」(Great Famine)と呼ばれるのが普通です。

80~100万人という恐るべき数の人々が病気と飢えにより亡くなり、更に200万人以上がアメリカやイングランドへ移民したと考えられているそうです。
大惨事を生んだ原因はいくつかあるのですが、ここでは「ジャガイモ飢饉」と呼ばれるゆえんについて、少しお話します。

数週間前に畑の見回りをしていたら、あることに気がつきました。
「あ、ブライトにかかってる!」

ブライト2014年7月 (1)

ジャガイモの葉っぱが黒く腐食しているのが見えますでしょうか。
ブライト(Blight)、日本語ではジャガイモ疫病とか胴枯れ病などと訳されているようです。ブライトは空気中に浮遊している菌の一種で、気温が上がり湿気が出てくると活発になります。主にジャガイモとトマトに感染し、葉や茎が腐っていきます。黒ずんだ腐食が根っこまで到達すると、土中のジャガイモもすべてだめになってしまう、おそろしい病気です。

我が家は毎年大量のジャガイモを栽培しているので、ブライトに感染しないかをチェックするのは7月の恒例です。

ブライト2014年7月 (2)

ジャガイモの品種によってはブライトに感染しないものもあり、何の心配もなくジャガイモを収穫することができます。しかし我が家の場合、食べておいしいと思うジャガイモがほとんど伝統的な品種で、どうしてもブライトから逃れることができません。
今ではブライト感染を未然に防ぐため、消毒液を散布することもできます。農薬と呼べるほど強力なものではないので、定期的に散布しなければなりません。
また、ブライトのタイミングが上手い具合にずれれば、感染する前に収穫することもできます。

ブライト2014年7月 (5)

ブライトは、一度かかるとあっという間に広がります。
感染した部分の葉っぱを刈り取ることから始めるのですが、たいていの場合こうした手作業ではもう間に合いません。

数年ぶりにかかったブライト。夫と相談して「ちょっと早すぎるけど、ジャガイモを収穫してしまおう」ということになりました。
ジャガイモは、通常花が咲き終わって下部の葉がだんだん黄色くなって来る頃に掘り起こします。

まだ花が咲いているものもありましたが、仕方がありません。

ブライト2014年7月 (4)

案の定、小ぶりなジャガイモが多いようです。
それでも、収穫量としては意外にもまずまずの出来。感染していなければ、一年分のジャガイモはとりあえず確保できたのではないかしら。ふう、よかった。

このブライトという疫病。
これがまさに、1800年代にアイルランドを襲った大飢饉の発端だったのです。
国民の3割がジャガイモに依存する暮らしをしていたアイルランド。ジャガイモの不作はアイルランドだけでなくヨーロッパ全域を襲ったそうですが、イングランドの支配のもと貧農の多かったアイルランドが、最も大きな被害を受けました。

大飢饉後には、アイルランドの人口が最盛期の半分にまで落ち込んだというのですから、ものすごい惨状だったのでしょう。
大飢饉は、それまで継承されてきたアイルランドの文化にも大きな打撃を与えました。
「僕の祖先は大飢饉の時にアメリカに移住してね」などという風に、今でも大飢饉にまつわる話は人々の間で語り継がれています。

仮に私たちのジャガイモがブライトにかかっても、飢えることはない今の時代。
過酷な時代を生きたアイルランド人たちに、思いを馳せます。



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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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