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地元に誇りを持つ気持ちを育む

2013.11.04 20:44|豊かな暮らしを考える
クレア(州)の歴史に残るシニアハーリングの全国優勝から1ヶ月が経ちました。
あの興奮はさすがに下火になってきましたが、今でも人が集まれば「試合どこで見てたの?」、「すごかったよねえ」という相変わらずの話題で盛り上がるアイルランド人たちです。
この前も、夫の携帯に親しい友だち(クレア人です)から不在着信が入っていて、メッセージが残されたようだったので夫が聞いてみると・・・「Up the Banner!」(「行け行けクレア!」のような意味)という短いメッセージが・・・。
「絶対、これを伝えたくて電話したわけじゃないよねえ」と笑う夫。

先日などは、夫の働くエニスの店に見ず知らずの女性のお客さんが入って来て、いきなり「この前は本当にありがとう!私たちのために、ありがとう!」とお礼を言われたのだそう。
なんのことやら最初は分からなかったそうですが、よく聞くとこの女性はゴールウェイの出身で、「(隣同士の州の)クレアがコークを破ってくれて、ゴールウェイの人々も大喜びだった」ということなのだそうです。

それにしても、こうして自分の生まれ育ったカウンティー(州)に、ここまで誇りを持てるというのは本当にうらやましいなあと思います。
これは、子どもから10代、20代の若者、そしてお年寄りまで全ての世代の人々が、共通して持っているアイデンティティーです。
更に言えば、海外を飛び回るビジネスマンから読み書きのままならない人までが、同じクレアの出身であるというところで分かち合えるものがあるということ。これは人の社会が豊かであるために、とても大切なことではないでしょうか。

アイルランドに10年近く暮らす中で、こうした地元に誇りを持つ気持ちを育む、いくつかの象徴が見えてきました。

まず、州ごとにある旗。
このブログでも盛んにクレアカラーの話をしていますが、例えばクレア州の旗の色は黄色(正しくはサフラン色)と青です。毎年ハーリングの大会時期には各家庭や店先で掲げられ、スポーツ用品店などで販売されています。今年は私たちのように新たに旗を購入した家庭が多いのではないかと思いますが、自分の州の旗が各家庭にある、というのは驚異的なことではないでしょうか。

また、クレアには「Clare FM」という地元のラジオ放送局があります。クレア州内で起こっているニュースを伝えたり、クレアで亡くなった方たちの葬儀の詳細なども流れるので、地元の人々にとってはなくてはならないラジオ局です。

クレアの新聞もあります。
数年前からもう一紙増えて、今では老舗の「Clare Champion」と「Clare People」の二つですが、どちらも地元での報道が中心の週刊紙です。かなり多くの人々が、このどちらかの新聞を週に一度は買って読んでいます。
そして、自分たちに関係している記事があれば「この前のクレアチャンピオンに○○が載ってたわよ!」とかいう具合に地域の中で話したりしています。

子どもたちの通う小学校でも、自分たちの州を尊ぶ気持ちがしっかり教えられています。ハーリングなどの大きな試合を控えた時は、学校でクレアカラーの帽子などを作ったり、クレアでよくうたわれる歌を覚えて帰ってきたり。
今年は決勝進出にちなんで「クレアカラーデイ」という日があり、子どもたちをはじめ教師たちも全員黄色と青の服で登校しました。

クレアカラーの子どもたち (3)
(クレアカラーのかぶりものを学校で作ってきたリラとショーン。食べているのはりんご・・)

私は神奈川県横浜市の出身ですが、神奈川県に誇りを持つ、横浜市に誇りを持つ、青葉区民であることに誇りを持つ、という感覚がほとんどありません。

誰もが目を通している地方の新聞、誰もが聴いている地方のラジオ局、皆さんの地域にはありますか?
私は小学校や中学校で神奈川県や横浜市の旗を描いた記憶もないし、歌を歌った記憶もありません。その結果、地元への愛着や応援する気持ちが、少なくとも私の中ではほとんど育っていません。とても残念なことです。

神奈川県の旗、神奈川県の花、木、鳥。こういったものは、存在はしていても人々の意識の中に、はたまた生活の中に浸透していなければ、ほとんど意味がないのではないでしょうか。

日本とアイルランドでは国の規模も違いますし、仕組みもまったく違います。比較すること自体が間違っているのかもしれません。それでも、本来なら地元に誇りを持つ気持ちは誰の中にあってもいいものですし、地域社会を作っていく上では必要不可欠ではないでしょうか。
その点、小国であるアイルランドは州も小さく人口も少なく、地域社会の形成にとても適した国なのかもしれません。

地元色を人々の心に浸透させる一つのコツとして、何事もシンプルに、小規模にすることがあります。
ラジオ番組は州に一つ、州の新聞も一つか二つ。この数が増えてしまうと、みんなが一緒に見ているもの、聴いているもの、という共通性がなくなります。それと、あまりごちゃごちゃと情報過多にならない、あまりに多くのものが競合しない、ということも大事ではないでしょうか。

地元に誇りを持つことは、自らのアイデンティティーを育むことでもあります。
今回のクレアの優勝は、誰もが「(クレアチームは)チームのために優勝を成し遂げたのではない。我々クレアの人々のために果たしてくれたのだ」と言います。根なし草になることなく、自分の生まれ育った土地を愛し、共有するということは、何事にも代えがたい喜びを運んでくるのです。



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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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