村の公園で子どもたちを遊ばせていると、近所に暮らすモーラさんが孫のコリンを連れて公園に入ってきました。お天気のいい日で公園には私たち以外誰もおらず、モーラさんはベンチに座る私に「こんにちは、お元気?」とあいさつをしてくれて、横に座りました。
コリンと私の子どもたちは同じ小学校に通っているので、学校の話や先生の話、ハーリングの話などしていると、いつの間にかモーラさんが昔話をはじめます。

ほら、この道の角にはね、昔小さなよろず屋があったのよ。あなたが来るずっと前になくなってしまったけど。私たち夫婦は二人ともラウス州の人間でしょう?それがアイルランド西部のこんな小さな村に突然住むことになって、戸惑うことも多かったわよ。
この角のよろず屋に初めて入った時もそう。
私はボールペンを探していて、店番をしていたミセス・ドネランに「ペン(Pen)はありますか?」と訊いたの。そうしたら、彼女ったらぶっきらぼうにこんなことを言うのよ。
「ペン?あなた今ペン、って言ったの?あなた、ペイズリーの国から来た人間じゃない?この国ではね、ペンのことはバイロ(Biro)と呼ぶのよ!」
よそ者扱いもいいところでね。慣れるまでに苦労した。

モーラさんと旦那さんの故ショーンはラウス州(Co. Louth)の出身です。ショーンの仕事の関係でクレアに引っ越してきたのだそう。日本語で言う転勤、ですね。アイルランドではかなり珍しいことです。

さて、ラウス州はダブリン州からさらに北に行ったところにある東海岸沿いの州で、いわゆる北アイルランドとの国境に隣接しています。そんな土地柄ですので北との関係も深く、昔はトラブルも多かった地域です。

ミセス・ドネランが言った「ペイズリー」とは当時の北アイルランド自治政府の首相イアン・ペイズリー(Ian Paisley)のこと。
プロテスタント系で連合王国派の最右派である民主連合党(DUP)を創設した人物です。そんな政治的背景のあるペイズリーは、共和国側のカトリックのアイルランド人たちにとっては悪魔そのもの、大の嫌われ者でした。ミセス・ドネランは、プロテスタントという含み(嫌味)を表現して「ペイズリーの国」と言っていたのですね。

正しい英語では確かにボールペンはペン。鉛筆はペンシルと呼ばれますね。
しかし。アイルランドではペンという言葉をほとんど聞きません。
じゃあボールペンのことをアイルランド人は何と呼ぶのでしょう?これが前述の「バイロ(Biro)」です。私はアイルランドに来た当初、バイロの意味が分からずに戸惑いました。何その単語?初めて聞いた!っていうか日本人は英語を習う時に「This is a pen.」から始めるのに、そのペンがペンじゃないってどういうこと?!

前述のように、モーラさんご夫婦の出身地であるラウス州は、アイルランド共和国の中にあります。更には、モーラさんご自身熱心なカトリック教徒です。北アイルランドの人でもなければ、ペイズリーの指揮するプロテスタント系でもないのに、フィークルの村に来た途端このような扱いを受けたご夫妻。さぞかし大変だったことでしょう。
ラウス州は国としてはアイルランド共和国でも、アイルランド人たちの感覚としては共和国と北のちょうど中間地点にあるような感覚の州なのかもしれません。

その発端となった「ペン対バイロ」。
皆さんもアイルランドにいらした際には、ぜひ使ってみてくださいね。

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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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