2016.07.26 07:49|豊かな暮らしを考える
洋裁や編み物の得意な友人がいます。一緒にフィドルを弾こうと彼女の家を訪れたところ、手元をライトで照らして何やら手作業をしているのです。

「これね、オーニャ(友人)のセーターなんだけど、袖のところがほつれたから直してほしいって頼まれてるの」

見ると、着古したクリーム色のセーターの袖部分の毛糸がところどころ切れて、大きな穴ができています。
「ちょうど似た色の毛糸が手元にあったから、まずは切れた糸にうまくつなげて、編んで、どうにか穴を繕えるかなと思ってね」

服を直して着るという行為は、私の世代では既に消えていました。
戦後の日本や50年代のアイルランドなどでは、つぎはぎを縫い付けては服を着回していました。貧しかった時代を経験したが故でしょうか、今のアイルランド人たちは古着というものに過剰な拒絶反応があり、服は新品でないといけないと思い込んでいる人が多いようです。
そんな新世代にあって、くたくたに着古されたセーターの穴を繕うアイルランド人の友人の姿が新鮮でした。

衣類が貴重だった昔は、食べていくために必死で生地も買えなかったと言います。苦しい時代であったことは確かですが、今の私たちが忘れてしまった価値観がそこにはあったのではとも思えてきます。
つぎはぎだらけの服は決してエレガントな装いではなかったかもしれません。その代わり、何年もその家で着回される衣類はさぞかし丁寧に大事にされていたことでしょう。

着古した服というのは、いつの間にか自分の体形にぴったりになっていること、ありませんか?他人のようだった新品の服が、何度も袖を通すたびに自分の体になじんでくる、自分の肌になじんでくるというのでしょうか。
そんな愛着のある服を一枚でも所持していることは、私にとってはとても幸せなことのように思えます。

いとへんのついた「繕う(つくろう)」という言葉を辞書で調べてみると、「破れたり、壊れたりしたところを直す」とあります。本来の意味としてのこの言葉は、私たちの日常生活ではほとんど聞かれなくなりました。

買っては捨てる。ちょっと着ては捨てる。
そんな衣類との付き合い方しかできなくなってしまうと、愛着も何もありません。その服がどこで作られているのか、誰が作ってくれたのか、そしてどんな素材でできているのかさえ、無頓着になるのではないでしょうか。
汚れたり破れたりしたら、その服はもうごみ箱行きです。

「断捨離」という言葉を初めて耳にした時は漢字が思い浮かばず、意味も分かりませんでした。ものの少ない質素な生活には私も憧れますが、「買っては捨てる」という行為を繰り返すだけでは解決になりません。

最初から買わない。
なるべく上質なものだけを取り入れて使い込んでいくことができたら、生活はとても美しいものになっていく気がします。
そしてそんな生活の中には、必ず「繕う」という美徳があるような気がするのです。


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発信者の紹介

望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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