「一期一会(いちごいちえ)」という四字熟語がありますね。
茶道に由来する日本のことわざで、元は千利休の言葉であると言われています。
一生に一度の機会であることを心得、主客ともに誠意を尽くす心構えを意味するということですが、私はこの言葉がとても好きです。特に新しい人との出会いの場において、よく思う言葉でもあります。
世の中には、素晴らしい人たちがたくさんいます。
そんな素晴らしい人たちに出会うことは、それだけで私の人生の大切な宝物になります。
去年、夫がアメリカで出会った女性を知る機会がありました。
彼女はアメリカに50年以上暮らしています。しかし生まれはコネマラ、アイルランドのゴールウェイにあるアイルランド語が話される地域の出身です。
彼女に初めて会った時、「なんて美しい人なんだろう」と思いました。
容姿の話ではありません。彼女のたたずまいには、誰が何を語るまでもなく、人としての美しさが満ちていたのです。
(雄大な自然が広がるコネマラ地方)
コネマラ地方の農村から、先に渡ったお姉さんを頼って一人でアメリカに移民した時、彼女はまだ10代だったそうです。
その当時から今に至るまで、一体どんな人生を送ってきたのか、彼女は多くを語りません。しかし、決して楽な生活ではなかっただろうね、と皆が言います。
彼女は歌をうたいます。アイルランドの古い歌を、母語のアイルランド語で流れるように歌います。
何も求めない人。それでいて、寛大な人。
静かな物腰の彼女は自分には厳しく、しかし深い愛情のある人です。
飾らず、ユーモアに富み、コミュニケーション上手な人。
観察力があり、知的で繊細。あわよくば壊れてしまいそうに思われて、同時に芯の強い人。
そんな風を演じているわけではなく、他人にアプローチをしているわけでもありません。
ただもう、そういう人なのですね。
こんな人が世の中にはいるんだな。
こんな人が生きられる世の中なのだな。
こんな人が生きられる世の中は、そんなに悪くないはずだな。
そんな風にも思えてきます。
彼女のような人に出会うことで、私の心は洗われ、豊かになっていくように感じます。
我が家に数日泊まっていた彼女は、子どもたちがベッドに行くと「歌をうたってあげてもいいかしら」と言って子どもたちの寝室へ。そっと覗くと、2台のベッドの間にぺたんと正座して、子どもたちに真剣に歌い語らう彼女の後ろ姿が今でも目に焼き付いています。
親切の押しつけではなく、無理強いでもなく、これが彼女なりの子どもたちへのアプローチ。
そして、子どもたちにもそれがちゃんと分かるのですね。素直にまっすぐに、彼女の心を理解したようです。
数年前に発覚した病のおかげで、体が少しずつ不自由になってきた彼女。もう治ることのないこの病気との静かな格闘が、彼女の美しさをいっそう引き立たせていると言ったらおかしいでしょうか。
今、彼女に教えてもらった歌を子どもたちはそらで歌います。かわいそうな、小さなコマドリの歌。アメリカの、ミズーリの歌。
ほんの短い間、時間を過ごしただけなのに、かけがえのないものを残していってくれた人。
また今年も、彼女に会えるでしょうか。
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茶道に由来する日本のことわざで、元は千利休の言葉であると言われています。
一生に一度の機会であることを心得、主客ともに誠意を尽くす心構えを意味するということですが、私はこの言葉がとても好きです。特に新しい人との出会いの場において、よく思う言葉でもあります。
世の中には、素晴らしい人たちがたくさんいます。
そんな素晴らしい人たちに出会うことは、それだけで私の人生の大切な宝物になります。
去年、夫がアメリカで出会った女性を知る機会がありました。
彼女はアメリカに50年以上暮らしています。しかし生まれはコネマラ、アイルランドのゴールウェイにあるアイルランド語が話される地域の出身です。
彼女に初めて会った時、「なんて美しい人なんだろう」と思いました。
容姿の話ではありません。彼女のたたずまいには、誰が何を語るまでもなく、人としての美しさが満ちていたのです。
(雄大な自然が広がるコネマラ地方)
コネマラ地方の農村から、先に渡ったお姉さんを頼って一人でアメリカに移民した時、彼女はまだ10代だったそうです。
その当時から今に至るまで、一体どんな人生を送ってきたのか、彼女は多くを語りません。しかし、決して楽な生活ではなかっただろうね、と皆が言います。
彼女は歌をうたいます。アイルランドの古い歌を、母語のアイルランド語で流れるように歌います。
何も求めない人。それでいて、寛大な人。
静かな物腰の彼女は自分には厳しく、しかし深い愛情のある人です。
飾らず、ユーモアに富み、コミュニケーション上手な人。
観察力があり、知的で繊細。あわよくば壊れてしまいそうに思われて、同時に芯の強い人。
そんな風を演じているわけではなく、他人にアプローチをしているわけでもありません。
ただもう、そういう人なのですね。
こんな人が世の中にはいるんだな。
こんな人が生きられる世の中なのだな。
こんな人が生きられる世の中は、そんなに悪くないはずだな。
そんな風にも思えてきます。
彼女のような人に出会うことで、私の心は洗われ、豊かになっていくように感じます。
我が家に数日泊まっていた彼女は、子どもたちがベッドに行くと「歌をうたってあげてもいいかしら」と言って子どもたちの寝室へ。そっと覗くと、2台のベッドの間にぺたんと正座して、子どもたちに真剣に歌い語らう彼女の後ろ姿が今でも目に焼き付いています。
親切の押しつけではなく、無理強いでもなく、これが彼女なりの子どもたちへのアプローチ。
そして、子どもたちにもそれがちゃんと分かるのですね。素直にまっすぐに、彼女の心を理解したようです。
数年前に発覚した病のおかげで、体が少しずつ不自由になってきた彼女。もう治ることのないこの病気との静かな格闘が、彼女の美しさをいっそう引き立たせていると言ったらおかしいでしょうか。
今、彼女に教えてもらった歌を子どもたちはそらで歌います。かわいそうな、小さなコマドリの歌。アメリカの、ミズーリの歌。
ほんの短い間、時間を過ごしただけなのに、かけがえのないものを残していってくれた人。
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テーマ:アイルランド不定期便
ジャンル:海外情報