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2014.08.12 06:05|豊かな暮らしを考える
いかにもどこかにありそうなタイトルの記事になってしまいました。

私の住む村フィークルの隣に、タラ(Tulla)という名の町があります。町といっても本当に小さくて、小型のスーパーとハードウェアのお店が数軒(パブは5~6軒ありますが)、紳士服のお店はあるけど靴屋はない。そんな田舎町です。

フィークルの隣なので、顔見知りが多い町でもあります。
子どもたちがアイスクリームを買いたいというので、タラのスーパーに車を横付けにして車内で待っていたところへ、タラに住む夫の友人が車に乗ってやって来ました。車の後ろには、馬を乗せた牽引車もくっついています。

車の中の夫を発見したこの友人は、車の窓を開けると「元気?」と声をかけてきます。
彼の車はエンジンはもちろんかかったまま、道路のT字路に一時停止した状態です。
「今夜、どこかで音楽やってないの?」「○○で、ジョンと一緒に演奏するよ」「あ、そうなの、じゃああとで遊びに行くよ」
「そのあとフィークルの○○で、今度は△△の誕生日パーティーがあるから、そこでも演奏頼まれてるんだよ」「えっ、△△何歳なの?」「60だってよ」「なんだ、まだ若いねえ」

と、こんな会話がつれづれと続きます。
T字路といっても、ここは町のど真ん中。話している友人の車の後ろには、一台、また一台と車が並び始めました。

しかし。それでもお構いなしに会話を続けるアイルランド人男性2人。
慌てる素振りもなく、のんきにペラペラペラペラ。
そして、友人の後ろにつけた車の運転手たちも、クラクションを鳴らすことなく待っています。

そんな状態が数分続いたのち、友人は「後ろが詰まってるみたいだから、行くね」と言って車を動かし、去りました。

こうした光景は、アイルランドの田舎でよく見かけます。
例えば、一方通行の道を運転していると、道路の真ん中にトラックが停まっている。運転手席のドアは開けっ放しで、中には誰もいない様子。

こんな状況に陥った時、あなたならどうしますか?

アイルランドでは、「運転手が帰って来るまでとにかく待つ」が常識です。

前述の友人もトラックの運転手も、30分とか1時間とか長い間待たせるつもりは毛頭ありません。
ほんの数分。それだったら、待ってよね。

これが、アイルランドの田舎ではまかり通るのです。

もちろん、ものすごく急いでいる時などは「ちょっと~!いい加減にしてよ~!」とムッとすることもあるわけですが、自己中心にならず、この「わずか数分」を見知らぬ他人に費やせるということ。赤の他人を気長に待つ心のゆとり。いいなあと思います。

「マナー」という側面から考えれば、これは社会人としてちょっとしたルール違反なのかもしれません。私自身、道路の真ん中に車を停めたとしても、後ろから車が来たら慌てて車を動かすでしょうし、そういうアイルランド人だってたくさんいます。
でも、この待たせる行為に対して「まったく非常識だ!」なんてぷんぷん怒る人はいません。きっとそんな発言をしようものなら、「何だろう、あの人は。ずいぶん心が狭いじゃないか」と言われかねません。
「こちらが待てばいいんだし、わずか数分なんだし、がみがみ言うほど大したことじゃないでしょうに」というのが、人々の一般的な感覚ではないでしょうか。

アメリカの片田舎に住む友人と話をしていたら、彼女がもっと面白い話を聞かせてくれました。
「私の住んでいるところって、人口はフィークルより多いけどみんなのんびりしててね。この前、車を運転していたら信号が赤になったんで、停まったのよ。私が先頭で、そうしたら後ろからもう一台車が来て私の後ろに停まったわけ。で、私ったら何をしていたんだか思い出せないんだけど、信号が青になったのに気がつかなくて、停車したままだったのよね。これが都会だったら、数秒で後ろからクラクション鳴らされるところよね。それがね、あっと気がついた時には信号がまた赤になろうとしてるわけ。つまり、私の後ろにいた車の運転手は、私と一緒に青信号をまんまと逃して停車したままだったの。私に向かって合図をするでもなくよ。きっと”前の車、青だけど気づいてない風だなあ。まあいっか、気づくまでこっちも待ってれば”っていうことだったんでしょうね。その時、私ってばいいところに住んでるなあ、って思ったのよね」

「後ろに待っている人がいることを、クラクションを鳴らして知らせてあげる方が親切だ」という考え方も、あるかもしれませんね。
でも、私はこの「待ってあげる」というのが好きです。こちらのほうが、やさしい感じがするのです。


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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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