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パットの父ダンの妹であるマーガレット叔母は修道女でした。いつでも修道服に身を包み、顔周りもベールで覆い、いつも大きな十字架のついたネックレスを首から下げていました。

マーガレット叔母はびっくりするほど小柄で、パーキンソン病を患っていました。いかにもか弱い女性といったところですが、鋭い目といたずらっぽい口元が印象的でした。

パットの父方はケリー北部の村の生まれで、彼らが子どもの頃はまだアイルランド語がかなり日常の中で使われていた地域です。亡き父ダンも、口癖のように使う言葉がアイルランド語の単語だったりして、幼かったパットたちも子ども心ながらに意味を理解していたのだそうです。

そんな背景もあって、マーガレット叔母はコーク州の地の果てのような漁村にある修道院に生涯暮らしながら、地元の小学校でアイルランド語を教えていました。
そう、この時代はまだカトリック教会がアイルランドの教育システムを担当していたのですね。

10年以上も前に、とある席でこの漁村出身の男性と会食をしたことがあります。パットが「ああ、僕の叔母がそこの修道院にいるんですよ」と話すと、さすがに小さな地域コミュニティーなので「なんて言う名前の方ですか?知ってるかもしれない」

ファーストネームはマーガレットでも、修道女になると与えられる名前というのがあって、彼女の名前は「シスター・アイタ」でした。

「シスター・アイタ!アイルランド語の先生でしょう?僕が小学生の時に習いましたよ。厳しい先生でね、みんなからこわがられてましたよ!」

そんなマーガレット叔母が、娘のリラが生まれた時に贈ってくれたのは女の子の赤ちゃんのためのお祈りカード。教会で買い求めることができる、健康祈願のようなものでしょうか。
ショーンが生まれた時にも、男の子用のお祈りカードを手書きのメッセージと共にていねいに送ってくれました。
去年の4月にダロックくんが生まれる前に屋根裏にしまっておいたベビー用品を一斉に出して整理していたら、このカードが出てきました。

あら、懐かしい。

ベイビーカード

A BLESSING FOR BABY
Watch over him, Lord
This child that we love
Watch over him, Lord
From your heaven above
Keep him from harm
Loved let him be
Watch over him, Lord
As you watched over me

神よ、この子を見守りたまえ
私たちの愛するこの子を
神よ、この子を見守りたまえ
あなたのいる天国から
あらゆる害からこの子を守りたまえ
この子を愛したまえ
神よ、この子を見守りたまえ
あなたが私を見守ってくれたように

私たちに宗教心はひとかけらもないけれど、これはマーガレット叔母からもらったパワーのあるカードのような気がする。
ダロックくんの寝ている木製のベビーベッドに飾ることにしました。

晩年はパーキンソン病がひどくなり、ダブリンのお姉さんが手配した修道女や僧侶の人たちが入所する介護ホームで過ごしました。

ダロックくんはマーガレット叔母からカードを贈られることはなかったけれど。きっとダロックくんが生まれたことも天国から見て知っているのだろうな。そんな気がします。

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12月も半ばを過ぎ、いよいよ来週はクリスマスですね。アイルランドでは、通りで知り合いに出くわすと「Happy Christmas to you」「Many happy returns」というこの時期特有のあいさつを交わすのが流儀となっています。
そんなクリスマス目前の本日、せっかくなのでクリスマスにまつわるお話を一つご紹介したいと思います。

皆さんのお知り合いや著名人に「ノエルさん」という名前の方はいらっしゃいますか。
アイルランド人に限らず性別を問わず、西洋圏を中心にノエルというファーストネームの人はたくさんいることと思います。アイルランドでは男性ならNoel、女性はNoelleという綴りで、人によってはアイルランド語綴りでNollaigと名乗る人も。

このノエルというファーストネーム。
ジョンやマイケル、メアリーやアンなどというファーストネームとは少し違う背景があって、昔からおもしろいなあと思っていました。どういうことかというと、ノエルという名前の人たちの多くは、クリスマス生まれなんですね。「ノエル」はフランス語が起源で、「クリスマス」という意味。

アイルランドでは、伝統的には12月25日に生まれた赤ちゃんにノエルという名を授けることが多いようです。
夫パットさんのお兄さんはデニスというファーストネームですが、誕生日が12月25日。デニスのミドルネームはNoelです。
私はフランス人の知人にもNoëlleという名前の女性がいて、彼女の誕生日は12月24日。

ノエルさん (2)
(義姉から送られてきたクリスマスカードの封筒についていた、今年のクリスマス記念切手のひとつ)

そんなわけで、ノエルさんという人に出会うと「この人の誕生日、ひょっとしてクリスマス?」と私はいつも考えてしまいます。

カトリック国であるアイルランドでは、クリスマスは国民にとって最も大切な聖なる日。この日に命を授かった赤ちゃんは人々にとって特別な意味があることでしょう。
一方で、クリスマスに生まれた人と話すと「クリスマスが重なると、自分の誕生日のお祝いが薄れる!つまんない!」というコメントも聞きます。

アイルランドにおけるファーストネームや姓の話、名前の話は実はとっても面白いので、また機会を改めて取り上げてみたいと思っています。

子どもたちは明日で学校が終わり、2週間ほどのクリスマス休暇に入ります。
村でクリスマスツリーを買い、デコレーションを屋根裏から引っ張り出し、夜になるとクリスマスライトとろうそくを灯して我が家もすっかりクリスマス気分。来週はクリスマスならではの食事を楽しみながら映画をたくさん観て、家族でゆっくり休暇を満喫したいと思います。

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家族でエニスの町を歩いていた時のことです。横断歩道を渡るところで、子どもが言います。

「あ、向こうから霊柩車がやって来るよ」

町のカテドラルの方向から来たので、葬儀が終わり今から町郊外にある墓地に向かうところなのかもしれません。

霊柩車は花を乗せています。花の下には棺が入っていることでしょう。
その後ろから遺族たちの車が続き、一行は霊柩車を筆頭にゆっくりとした速度で進みます。

「運転してる人たち、みんなお祈りしてるね」と娘。
見ると、霊柩車とすれ違う対向車に乗る人たちは徐行しながらみな車内で胸に十字を切っています。

こんな場面に出くわすと、いくら教会離れが進んでいるとはいえアイルランドはまだまだカトリックの国なのだなあと実感します。

娘がふと「こういう時、パットはお祈りしないの?」と尋ねます。私たちの子どもたちは、私のことはマムと呼ぶのに対し、父親のことは「パット」とファーストネームで呼ぶのです。

パットが子どもたちに話しているのが聞こえます。
「(もうカトリック教徒じゃないから)お祈りはしないけど、死者に対して敬意を示したいとは思うよ。おしゃべりして笑ったりふざけたりはしていたくないでしょう?一度立ち止まって、霊柩車が通り過ぎるまで黙とうしているよ」

Beanieのランプ

霊柩車は、通夜の行われる遺族の自宅や葬儀会場から葬式(ミサ)の執り行われる教会へ、または教会から埋葬される墓地までの間で使用されます。いずれもたいていの場合は地域内で行われるので、距離は短いものです。

町中などで急に交通が遅くなった、前の車が減速して周囲を見渡すとすべての車が徐行に近い運転をしている。何だろう?と思うと前に霊柩車がいることが多いです。
自分が対向車であっても同じこと。道路の反対側を運転していても、それまでと同じ走行速度でどこ吹く風・・ということはありません。死者と遺族に心を配慮し、減速します。

こうしたことは、学校や道徳の時間で教えるべきものではないですね。
社会のモラルというのでしょうか。
家庭内で我が家のように親から話があったり、そうでなくとも社会に生きる中で自然と身につけていくのが理想的なのかなと思います。

それまで爆音で音楽をかけながら飛ばしていた若者も、ボリュームとスピードを落として厳粛します。
いい国に暮らしているなと思います。

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いよいよ師走も半ばとなりました、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
アイルランドはクリスマス一色、我が家も今朝クリスマスツリーを調達したところです。

アイルランドのクリスマスは家族で過ごすもの、というお話を以前に書いたことがありました(こちらです)。
とりわけ子どもたちにとっては、クリスマスは魔法の時間です。クリスマスの朝、ツリーの下に置かれたサンタからのプレゼントは、子どもたちの目を輝かせます。

新聞を読んでいたら、2015年の今年に両親が子どもたちのクリスマスプレゼントに費やす平均金額は167ユーロの見込み、ということで驚きました。日本円にすると、2万2,000円強というところでしょうか。もちろん子ども一人につきです。

これを後押ししているのが、クリスマス近くにアイルランドで必ず制作される大人気のテレビ番組です。
その名も「The Late Late Toy Show」。
普段は毎週金曜日の夜にやっているトーク番組「The Late Late Show」が、この夜だけはアイルランドでその年に人気の出たおもちゃを子どもたちと一緒に紹介するトイショーに様変わりします。



番組は夜の9時半から始まって、終わるのは12時近く。しかしこの夜だけは、夜更かしをしておやつを食べながら番組を観るのがアイルランドの子どもたちにとって特別な楽しみの一つなのです。

トイショー

我が家もチョコレートビスケットをたくさん焼いて、甘~いココアと一緒に子どもたちとショーを楽しみました。
番組を観ながら子どもたちは「あれがいい」「これが欲しい」とおしゃべりし、大人は大人でプレゼントの候補をじっくり考察・・といったところでしょうか。

さて、アイルランドではクリスマスになると大人同士でもプレゼントを贈り合う習慣があります。カップル、親しい友だち、両親、きょうだい。
ほかにもクリスマスの飾りつけやクリスマスの日にいただく豪華なディナーやデザートなど、食費にも大変なお金をかけます。
アイルランドでは12月の頭から、週末の町中が買い物客で混みはじめます。
場合によってはローンを組む人までいるそうですから、クリスマスは何かと出費のかさむ一大行事なのです。

夫と話をしていたら、「僕の母が子どもだった頃、クリスマスプレゼントはオレンジ1個だったそうだよ。昔はオレンジなんてめったにお目にかかれない外来品だったから、大喜びしたんだって」ということです。
時代は変わるものなのだなあ、としみじみ感じ入ります。


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暦がかわって12月になりました。少し遅れてしまいましたが、「アイルランドにおける11月」のお話をしたいと思います。

ある日、夕食の席で娘のリラが「今月は死者の月だね」と言います。
学校の宗教の授業で習ったのだそうで、夫も「そうそう、いろんな魂がうそこらじゅうにうようよしてるよ~」と言って笑っています。

10月31日のハロウィーンが終わると、カトリック国であるアイルランドでは11月1日は諸聖人の日という祝日、2日は死者の日(万霊節)と呼ばれます。
11月は、アイルランドでは死者の魂がさまよっていると言われる月なのです。

具体的にはお墓参りがひんぱんに行われるのと、教会では通常にはないミサが行われたり、特別なお祈りも用意されます。

11月は死者の月
(夫の祖父が眠るフィークル村の墓地)

義母の話では、昔は11月になると暖炉の灰を毎日きれいに掃除し、昼夜を問わず家のドアを開け放していたそうです。ちょっと寒そうですが、「死者の魂がいつでも家に帰って来られるように」ということですね。
面白いなと思いました。

また、11月はアイルランドの人々にとって冬の始まりの月です。気候の不安定な月だからでしょうか、アイルランドに暮らしていると周囲で訃報の多い月でもあります。

そんな11月が終わると、アイルランドは一気にクリスマスに向けた準備で忙しくなります。
寒く長いアイルランドの冬を彩ってくれるクリスマスは、それだけでありがたい存在です。
そして、12月21日は冬至。一年で最も日の短い日で、この冬至を過ぎれば春に向けてまた少しずつ日がのびていきます。



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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と5人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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