2018.06.01 14:35|豊かな暮らしを考える
自分たちで野菜を育てていると、畑仕事をしながら無意識に考えごとをしていることがよくあります。それはまるで、目の前で青々と育つ野菜たちが私に新しいことを気づかせてくれたり、教えてくれたりしているようです。
その一つが、日本でよく聞き慣れていた「特産野菜」についてです。

我が家の畑ではいろいろな野菜が育ちます。

ガーデン20176月 (2)

ジャガイモ、玉ねぎ、にんじん、ニンニク、セロリ、キャベツ、カブ、ネギ、レタス、グリンピースにそら豆。

私のスーパーマーケット2016 (1)

ビニールハウスの中ではトマト、ピーマン、きゅうり、ズッキーニ、枝豆、ブドウ、イチゴ・・・。

以前不定期便の記事でイチゴについて書いたことがありました(過去の記事→「いちご食べ放題・・!」)。アイルランドではいちごと言えばウェックスフォード州産のイチゴが有名です。でも自分のところでできるイチゴは市販のウェックスフォード産のイチゴよりもずっと新鮮でずっとおいしい!わざわざ買おうとは思いません。

いちご食べ放題20156月 (13)

ニンニクは青森、落花生は千葉、さつまいもは鹿児島、ゴーヤは沖縄・・。
でも、私の実家のある横浜市でもニンニクは育つし落花生もサツマイモもゴーヤも育つ。

自分の住む地域で育つ野菜や果物を、どうしてわざわざ遠くから取り寄せて食べるのでしょう?

日本に暮らしていた頃は考えたこともなかった素朴な疑問です。

こんなことを発言したら農協の皆さんに怒られてしまうのかもしれませんが、地元で育つ野菜なら、トラックや飛行機でわざわざ運送しないほうが環境にもよく、地域にも貢献できます。

我が家は自分たちで育てていますが、近所に農家さんがいる地域であればなるべく近くで栽培している野菜を買いたいものです。

地産地消。適地適作。
自分の暮らす地域で育つ野菜を食べる。
自分の地域に残る伝統食材を食べる。
自分の地域の農家さんを支える。
自分の地域を歩く。

トウモロコシの収穫2014 (2)

こんな野菜との関係は、自分の暮らす土地を知ることにつながっていきます。
自分が毎日口にしているものがどこから来て、誰がどんな風に育てているのかが分かります。
食に対する不安や不信。ないほうがいいですよね。
さあ、今日の夕飯には何の野菜を使おうかな。

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2018.04.24 00:19|豊かな暮らしを考える
私の知っていた女性が突然亡くなりました。
日本に暮らしていた頃にアイルランド音楽を通して何度かお会いしましたが、友人と言えるような親しい間柄ではありませんでした。アイルランド不定期便をいつも熱心に読んでくださり、日本で知り合いだった頃よりもインターネットを通しての交流で彼女のことをより知るようになった気がします。
知らせを読んだ時には頭が真っ白になりました。
急死されたその日にも、私のところには彼女からのコメントが寄せられていました。人の死は時にこんなにも突然にやって来るものなのでしょうか。死を予期せず明日の予定もあっただろう彼女とパートナーの彼、そしてご家族の皆さんを思うと不憫でならず、今でもほろほろと涙があふれてしまうのです。
どうぞ安らかに。どうか安らかに。

今日は、愛の話をしたいと思います。

気が向くと、音楽セッションを楽しむために村のパブに行きます。マーティンは、このパブによくお酒を飲みに来ています。
飲み物を頼んでいる時にたまたま横にいたのをきっかけに、初めて言葉を交わしました。
私はマーティンを知らなかったけれどマーティンは私がどこの誰だかを知っていて、15年前に亡くなった共通の知人の話などをしていました。優しく穏やかな紳士です。
しばらくすると、マーティンがこんなことを言います。

「どうだろう、君は私の妻を知っていたかな。どうだろう。素晴らしい女性だったんだ。うん、おととし亡くなってね。癌だった。分かった時はもう遅くてね。私の知っている中で最も美しい女性だった。明るくてね。どうだろう。君は彼女に会ったことがあったのかな」

「さあ、どうでしょう。あなたのことも今知ったばかりだから」と答えると、

「うんうん。そうだよね、それもそうだ。でね、これが彼女なんだよ」と言ってマーティンはパンツのポケットから祈りのカードを一枚取り出し、そこに写った亡き奥さまの写真を見せてくれました。

アイルランドでは人が亡くなると、故人の写真が載った祈りのカードを葬儀に来てくれた人々に渡すのが風習です。

マーティンがカードをポケットから出した際の手の動きから、私と話している間もずっとポケットの中の写真をにぎりしめていたことがことが分かります。

桜の木2017 (4)

あとから親しい友人とマーティンの話をしていると「彼はね、いつも誰にでもそうなのよ」と言います。

新しい誰かに会うと、その人が奥さまを知っていたかどうかさり気なく訊ねるのだそうです。
まるで亡くなった奥さまの記憶を記録し直すかのように、2年経った今でも自分の知らない人と彼女とのコネクションを探し求めるマーティン。

「最期まで彼女の世話を自宅でして、看取ったのも彼だったのね。彼女への愛情がすごく深かったから、残されたマーティンはかわいそうでね。周りの人たちも辛くなるほどだったって」

「今年に入ってからだよ、マーティンが再びパブに出てくるようになったのは。少しずつ社交もし始めて、彼にとってもいいことよね」

泉から湧き出る水のように途絶えることのないマーティンの亡き奥さまへの愛は、誰も侵すことのできない神聖なものです。
愛する者を失ったら、人は時にこんなにも弱くなっていいし、周りはそんな弱い人をここまで優しく見守っていていい。
あたたかい社会だなと思いました。

我が家の庭にある日本の桜が今満開です。さまざまな思いを胸にまだ小ぶりなこの木の下に立ち、今日も花を見上げます。

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2017.09.20 08:43|豊かな暮らしを考える
我が家の畑では、台所から出る生ごみもコンポストにしてときどき畑に撒いて使っています。
その結果、畑を耕している時に土の中に意外なものを発見することがあります。間違って混入したプラスチックの小さな蓋、分解されずに残ったシールやセロテープ。

ああ、土に返らなかったのだな。

見つけるたびにそう感じます。

一方で、私の周囲にある自然、植物や動物、鳥などを無意識に眺めていると、彼らは土に返らないものは何も残さないということにも気がつきます。当然のことに思えますが、論理で知るより体験で知るとその本当の意味が分かります。
彼らは地球のサイクルの中で、地球に負担をかけることなく生存している。まるで地球と共存する方法を心得ているかのようです。
土に返らないものを排出しているのは、人間だけなのですね。

歩む道に迷った時、言葉に詰まった時。私の心の師事の一人である環境活動家サティシュ・クマール氏の哲学を聴くようにしています。
彼がシンプルに紡ぎ出す言葉は、私たちの心に語り、問いかけ、いつまでも残ります。

サティシュ・クマール
(インドの平和/環境活動家、Satish Kumar)

クマール氏も「土」のことに触れています。
”私たち人間は、土に生き、土に返る。こんなに当たり前のことを、私たちは忘れていませんか。”
”自分たちのケアをするということは、地球をケアするということなのです。自然というものは遠く離れたところにあるものではなく、私たちそのものなのです。私たちもネイチャーなのです。自然を利用し痛めつけることは、実は私たち自身を傷つけていることになるのです。”

こぼれ種が嬉しい2016 (1)

土に全く触らない生活を送る人にとっては、ピンとこない話かもしれません。
人工的なものに囲まれた暮らしになればなるほど、土の存在は遠く感じられるものです。「土に触るなんて汚い」「手が汚れる」と感じる人も多いのかもしれません。でも、土から離れ、土に返らないプラスチックやいろいろの人工物に依存した暮らしが、実は地球を汚しています。

宮崎駿氏の映画の中に「土から離れては生きられないのよ」というセリフがありましたが、これはアニメ世界の話ではなく私たちのストーリーです。

「土」について考える時間。「土」に触れる時間。
今こそ必要なのかもしれません。

Erika Moc O'C @Twitter
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2017.03.03 23:30|豊かな暮らしを考える
冬になると、週に一度決まった日に近所に住む女性の家を訪ねます。
一人暮らしの彼女はおしゃべり相手が来るのをいつも楽しみにしていて、午前中の2時間ほどを共に過ごします。

洋裁や編み物の得意な彼女は、いつでも何か作っています。彼女の家を訪ねる時は、私も今自分が編んでいるセーターや手袋などを手提げかばんに入れて持っていき、お互い手を動かしながらおしゃべりをするのです。

彼女はお茶を飲みません。もっぱらコーヒー派の人で、私が行くといつでも「コーヒー作るわよ。エリカはお砂糖とミルク入れるのよね」と言って愛用のコーヒーメーカーでおいしいコーヒーを入れてくれます。

ミルクはたいてい私が彼女の冷蔵庫から出します。
彼女はコーヒーに何も入れない人なので、ミルクを使うのは私だけだからです。私が冷蔵庫を開けても、彼女は全然気にしません。それだけ気兼ねのない付き合いをしているのです。

彼女は、私よりも30歳年上です。
私の両親と同世代の人です。
いつの間にか親しくなって、近所に住んでいることもあり散歩の途中に彼女が我が家に立ち寄ったり、外でばったり会って数分立ち話をしたり。すっかりおなじみの顔となっています。

ある日彼女から電話がかかってきて、「今からバリナーの町に頼んでた老眼鏡を取りに行くんだけど、天気もいいしドライブがてらエリカも一緒に来ない?」とのこと。
急ではあるけれど、たまにはそんなことをしてみてもいいかもしれない。

「OK、じゃあ支度してそちらに歩いて向かうわよ」

昔手首を骨折して以来、彼女はオートマチックの車を運転するようになったそうです。マニュアル車が主流のアイルランドでは珍しいオートマ車。「マニュアルはギアを変換するのに手首に負担がかかって辛いのよ。オートマ車を探すのに苦労したけど、運転できるだけでも感謝しないと」
フィークルの村を出て、田舎町を一つ通過するとまもなくダーグ湖が丘の向こうに見えてきます。
晴れ渡った清々しいお昼の時間、湖畔の道路をゆっくりドライブしていきます。湖には風を受けて走るヨットの姿も見えます。道路の反対側は急こう配の丘が続き、太陽の光を浴びた濃い緑が眩しいほどです。なんて気持ちのよい風景でしょうか。

駐車場に車を停め、彼女の犬リンゴを車内に残して眼鏡屋さんに付き添います。店のステップを上がる時は、足腰のあまり良くない彼女の手をとって一緒に入店します。「私ったら老婆みたいよね!まったくいやになっちゃう」

それから、彼女の親友が働いている健康食品のお店に立ち寄ると、クラフトのコーナーでフェルトづくり用のきれいなウールを見つけました。
「羊毛100%だし、どれも色がきれいでお買い得だわよ!」
くすんだアザミ色や抹茶の色の羊毛の玉をたくさん買い込んで、自分のバッグに詰め込みます。

フェルト用ウール2016 (1)

ショッピングが終わると、お店の女性に教わった小さなカフェを何とか見つけ、ここでやっと一休み。
ミルクがたっぷりのラテとさくさくのペイストリーのお菓子をいただいて、バッグからこぼれ落ちそうな羊毛の玉をもう一度出して眺めては、「何を作ろうかしらね」と二人でアイディアを出し合います。

お店の人たちに、私たち二人がどう映ったのかは知りません。
風貌や話すアクセントからして母娘ではないだろうし。

世代が違えば考え方や受け取り方が違うこともあって、家族観や今起こっている社会問題などの話をしている時に「えっ、そんな風に思うの?」と顔を見合わせることもあります。
世代を越えて、実はお互い多くのことを学んでいるのかもしれません。

年がこんなに違っても、「フレンド」とお互い呼べることを嬉しく思います。
私にとって、友だちでも人生の伴侶でも、年の差というのは人間関係を作る中で障害にはなりません。むしろ、年の差など考えもせずにその人とまっすぐに向き合えることを、大事にしたいと思っているのです。

さて、バリナーの町で彼女とお茶をした数日後のこと。
「エリカ、すごいこと発見したの!」と彼女が興奮気味で言います。
「エリカと二人で外出したあの日ね、偶然にも『女性の日(International Women’s Day)』だったことが分かったのよ!」
そう言って、彼女は私に抱きつき大喜びをしたのでした。

今年の「女性の日」にも、またバリナーに行ってカフェでお茶をしましょうよ。
というのが、彼女と私のプランです。
女性の日は3月8日です。
国際女性デー(ウィキペディア)


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2016.07.26 07:49|豊かな暮らしを考える
洋裁や編み物の得意な友人がいます。一緒にフィドルを弾こうと彼女の家を訪れたところ、手元をライトで照らして何やら手作業をしているのです。

「これね、オーニャ(友人)のセーターなんだけど、袖のところがほつれたから直してほしいって頼まれてるの」

見ると、着古したクリーム色のセーターの袖部分の毛糸がところどころ切れて、大きな穴ができています。
「ちょうど似た色の毛糸が手元にあったから、まずは切れた糸にうまくつなげて、編んで、どうにか穴を繕えるかなと思ってね」

服を直して着るという行為は、私の世代では既に消えていました。
戦後の日本や50年代のアイルランドなどでは、つぎはぎを縫い付けては服を着回していました。貧しかった時代を経験したが故でしょうか、今のアイルランド人たちは古着というものに過剰な拒絶反応があり、服は新品でないといけないと思い込んでいる人が多いようです。
そんな新世代にあって、くたくたに着古されたセーターの穴を繕うアイルランド人の友人の姿が新鮮でした。

衣類が貴重だった昔は、食べていくために必死で生地も買えなかったと言います。苦しい時代であったことは確かですが、今の私たちが忘れてしまった価値観がそこにはあったのではとも思えてきます。
つぎはぎだらけの服は決してエレガントな装いではなかったかもしれません。その代わり、何年もその家で着回される衣類はさぞかし丁寧に大事にされていたことでしょう。

着古した服というのは、いつの間にか自分の体形にぴったりになっていること、ありませんか?他人のようだった新品の服が、何度も袖を通すたびに自分の体になじんでくる、自分の肌になじんでくるというのでしょうか。
そんな愛着のある服を一枚でも所持していることは、私にとってはとても幸せなことのように思えます。

いとへんのついた「繕う(つくろう)」という言葉を辞書で調べてみると、「破れたり、壊れたりしたところを直す」とあります。本来の意味としてのこの言葉は、私たちの日常生活ではほとんど聞かれなくなりました。

買っては捨てる。ちょっと着ては捨てる。
そんな衣類との付き合い方しかできなくなってしまうと、愛着も何もありません。その服がどこで作られているのか、誰が作ってくれたのか、そしてどんな素材でできているのかさえ、無頓着になるのではないでしょうか。
汚れたり破れたりしたら、その服はもうごみ箱行きです。

「断捨離」という言葉を初めて耳にした時は漢字が思い浮かばず、意味も分かりませんでした。ものの少ない質素な生活には私も憧れますが、「買っては捨てる」という行為を繰り返すだけでは解決になりません。

最初から買わない。
なるべく上質なものだけを取り入れて使い込んでいくことができたら、生活はとても美しいものになっていく気がします。
そしてそんな生活の中には、必ず「繕う」という美徳があるような気がするのです。


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望月えりか

Author:望月えりか
ウェブサイト「アイルランド田舎生活」のブログ版、日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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