トウモロコシを知らない義父

夫の実家でディナーをいただいていた時のことです。義母が「リラが好きだから」と冷凍のトウモロコシを買って、それを蒸して食べさせていました。リラがトウモロコシにかぶりついていると、義父が一言。

「なんじゃそりゃ、野菜か?」

「えっ、トウモロコシを知らないの?」と思わず口に出していいそうになりましたが、考えてみれば義父ダンの食生活は極めてトラディショナル。毎日のディナーはたいていアイルランド家庭料理の定番「ベーコン&キャベッジ」だし、口にする野菜と言えばジャガイモ、キャベツ、人参、玉ねぎ、パースナップ、ターナップ・・本当にそれぐらいです。
以前に私が町で買ってきたカボチャを見て、「カボチャか、それどうするんだ、食べるのか?」とダンに聞かれたことがありました。カボチャなんて日本人からすると西洋の野菜にも思えますが、アイルランドでは食べる習慣はなく、「カボチャはハロウィーンの時の飾り」程度に思っている人が多いようです。ダンがトウモロコシを知らなくても・・当然なのかなと思いました。

他にも、義父が断固として食べない野菜はたくさんあります。カリフラワー、ブロッコリー、グリーンピース、レタス、トマトをはじめ、茄子やピーマン、キュウリなどはもってのほかです。

そんなわけで義父の食生活はとても質素ですが、生まれてからずっと慣れ親しんだ自分の食事に忠実なのは、決して悪いことではなくむしろ自然の姿なのかもしれません。

マザーグースのうた

子どもの頃、谷川俊太郎が訳した「マザーグースのうた」をよく聴いていました。
イングランドで子どもたちに親しまれている童謡や詩を日本語に訳したもので、日本でよく知られているものでは「ハンプティーダンプティー」や「きらきら星」などです。娘のリラが音楽を聴けるようになったので、自分が聴いていたのと同じテープが欲しいと思って同じ年の女の子のいる日本の親友に話したら、このテープはもう廃盤になっていて売ってないみたいということでした。もう手に入らないのかと残念に思っていたら「地元の図書館で借りられた!」とのことで、これをコピーしたのものと谷川さんの訳詩と堀内誠一さんの素晴らしい挿絵の入ったマザーグースの本3冊セットを去年の息子の出産祝いにもらいました。とても嬉しい贈り物でした。

娘のリラの出産祝いにもらった絵本の中に人気のある童謡のたくさん入ったものがあって、今娘の一番のお気に入りです。イングランドの童謡はそのままアイルランドにも来ているので、子どもだけでなく大人たちも「ああこれ大好きだったな〜」なんて言って口ずさみます。夫もメロディーまでしっかり覚えているものもあって、よくベッドで娘に読み聞かせをしています。めくってみると、あら不思議、谷川さんの訳詩で親しんだあの「マザーグースのうた」に入っていた歌がたくさん見つかりました。
娘の頭の中で日本語のマザーグースのうたとこの絵本の中の英語のうたとが同じものと認識されているとは思いませんが、そのうちどちらの言語でも楽しんでくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
英語では、読んでいる大人まで惹きこまれるような韻が踏まれていること、日本語では谷川さんの楽しくて美しい言葉遊びがとても魅力的です。

大人になった今でも夫や私がこれらのうたを口ずさめるということは、それほど印象的だったのでしょうし、なにより子どもは韻を踏む詩や歌が大好きです。
テレビのアニメやキャラクターもいいですが、地味でも心に残る歌に親しんで育った子ども時代を幸せに思います。

日本の「名曲」を聴く

5月の私の誕生日に、父から徳永英明のCDが3枚届きました。
小学校、中学校時代に父と一緒に好きになった歌手です。彼のオリジナルのものも良かったのですが、そのうち2枚の日本の名曲を歌ったものが気に入りました。

「時代」や「なごり雪」など誰もが口ずさめる古い歌に加え、「涙そうそう」や「ハナミズキ」など比較的新しい歌も入っていて、それがシンプルなアレンジで歌われています。
日本にいた頃は特に夢中になって聴いていた類の音楽ではないのに、故郷から遠く離れてみると泣きたくなるほどに懐かしく、身に沁みるものです。松任谷由実や井上陽水が急に聴きたくなったりするのもアイルランドに住み始めてからです。

コークに住む高校時代からの親友が週末に遊びに来たので、夫たちをよそ目に二人で夜中まで聴き入りました。こうして聴いていると、発表されて数ヵ月後には人の記憶から消えてしまう使い切りの歌と、何十年経っても人々から愛される歌があるなあと思います。「こういう歌を「名曲」と呼ぶんだよねえ」なんて二人でしみじみ話しました。最近の歌はみんな消えてしまうと思っていましたが、「涙そうそう」や「ハナミズキ」などはこうして歌われるとメロディーも歌詞も美しくて、「名曲」と呼べそうです。

また、悲哀というのか、寂しさ、後悔、切なさなどという感情の中にある日本独特の美に久し振りに触れたような気もしました。こちらに住んでいると、このような感覚を忘れてしまいます。
アイルランド音楽もいいけど、やっぱり自分の国の音楽は特別だなあ・・などと思う三十路の春のことでした。

息子の定期検診

火曜日に、隣町のタラで息子の定期検診をしてきました。
息子のショーンは今9ヶ月、今回の検診では聴覚と視覚、股関節のチェックをしてもらい、異常なしとのことで安心です。ドクターが「何か気がかりはありませんか?」、「ショーンの成長ぶりには満足しています?」と丁寧に聞いてくれるのも嬉しいものです。
いつもお世話になっているナースのクリスティーンと女医さんですが、ショーンは人見知りがひどく、予想通り緊張の面持ちのあと少し泣きました。

身長と体重も測定してもらったところ、身長79センチ、体重は10.1キロでした。9ヶ月にしては大きいかなあとは思っていましたが、これはアイルランドの標準と比較しても大きめです。家に帰って娘の手帳とも比較してみたら、やっぱり一回り大きいようでした。体が大きいことがプラスになるのかどうかは分かりませんが、彼なりに成長してくれればそれでいいと思っています。
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ちなみに娘は現在2歳7ヶ月で体重は13キロです。2歳離れていても体重差は3キロなので、同じ紙おむつが使えるのは便利です。

春の知らせ その二

つい先々週までまだ霜の下りていたアイルランドですが、先週末から急に暖かくなり、今日の気温はなんと23度。少し歩くだけで汗ばむぐらいの陽気です。
とうとう春が来たと思っていたら、今度は初夏のような暑さで驚きます。週末にかけてまた雨が降るようですが、この暖かさで季節の花々も一斉に咲き始め、黄色いハリエニシダの花は満開ですし、ライラックの紫や桃色の花があちこちで開花し始めて、それはきれいです。

家の周りではカッコーも毎日鳴いています。カッコーは木に止まっている時にだけ鳴くのかと思っていたら、飛びながらも鳴くのですね。アイルランドに来るまで知りませんでした。
納屋の中のツバメの巣を占領していたミソサザイの子どもたちもどうやら巣立ったようで、今はツバメたちが忙しそうに出たり入ったりしています。自分たちの家にやっと帰れて嬉しそうです。

この暖かさなら、我が家も夜になってレンジに火をくべる必要がなくなり、助かります。
娘のリラも、ドアを開け放しにしておくと自分で長靴を履いて外に出れるのが嬉しそうです。但し、長靴の右と左がよく反対になっていますが。
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