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2019.05.18 00:43|地域コミュニティー
隣人が数週間前に転んで足を骨折してしまいました。地域看護師さんがシャワーを手伝いに来てくれたりしているようですが、一人暮らしなのでちょっとしたことにも難儀するようです。私たちもひんぱんに彼女の家を出入りしては、手を貸しています。

「数日前からひどい頭痛なのよ」という隣人、「行きつけのお医者さんに薬を出してもらったのだけど、それを車で取りに行くなんてこと、エリカに頼んでもいい?」と電話があり、今朝ひとっ走りして隣町のスカリフまで行ってきました。

スカリフまでは車で20分ほど。
お医者さんに行くと受付の女性がすぐに小窓を開けて対応してくれました。
「あの、私の隣人のために来たんです。今朝ドクターに電話をして薬を処方してもらったそうなんですが、本人は取りに来られなくて」と事情を話すと「ああそうなのね、いいですよ。彼女の名前は?」
受付の女性も私の隣人の名前がすぐに分かって、「ああ彼女ね、はいはい、これが処方箋。ご苦労さま!」

アイルランドの公園 (8)
(スカリフに流れる川沿い)

処方箋を手に持って、歩いて数分の薬局へ。週末前だからでしょうか、今日はいつもより混んでいます。しばらくして順番がまわってくると、対応してくれたのはお互い顔見知りの薬剤師さん。彼女の娘さんはアイルランドの伝統的なステップダンスが上手で、数年前までよく村のパブにお披露目に来ていたのです。「こちらの薬、お願いします」「OK、ちょっと待っててね」

「娘さんは元気?」なんていう会話をしてもよかったのだけど、今日は時間がないので薬を受け取ってサインをし、「ありがとうございます」「ありがとう」とあいさつをしてから早々に店を出ました。さて、スカリフに来たついでにいつも通っているオーガニックショップへちらっと寄ろう。今日はあたたかいしお天気も良いせいか、お店のドアは全開。足を踏み入れると、リサがカウンターで働いています。今朝入ってきたらしい焼きたてのサワーブレッドを並べているところでした。「ハイ、リサ」「ハイ、エリカ」
彼女は私のご近所さんの妹さんで、よく遊びに来ています。彼女の子どもと我が子どもたちもよく遊び、仲がいいのです。「いいお天気よね」「本当に。気持ちがいいよね」こちらも、時間があればもっとおしゃべりしたかったけれど、今日は隣人に早く薬を届けたいし、また今度。
野菜を販売するコーナーを少し覗くと、ここにもお店のスタッフさんが在庫の整理をして働いていました。名前も知らない人ですが、「お元気?」「ええありがとう、そちらは?」「元気です」とあいさつ。
一人で買い物をしていても、口を開かずにできる買い物はありません。

買った商品を袋に入れないお店も多いアイルランド。近隣で手作りされているオーガニックの固形石鹸3個と、パットさんがいつも作っているムーズリに入れるオーガニックのスペルト麦のポップを片手で抱えるように持って、駐車した場所まで歩きます。地元の人らしき女性が、薬局の前で立ち話をしています。道路を渡ると路上に一時停止した車の窓が開いていて、そこに男性がよりかかるようにして運転手の男性とおしゃべりしています。それを歩道でのんびり眺める男性が、道すがら「Good morning」とあいさつをしてきたので、私もすかさず「お元気ですか」と返します。あいさつは、知らない人にもするのが当たり前。すれ違ったり、たまたま目があったりした時には「どうも」とお互い声をかけ合うのが、アイルランドの田舎の常識です。

隣人の家を軽くノックしてから、ガチャッと勝手にドアを開けます。名前を呼ぶと奥から声がして「エリカー?今バスルームにいるの、入ってて」
大事な薬を渡し、ついでに洗ったばかりのパジャマを外に干し、きれいなグラスをキッチンから持ってきて水を入れてあげます。おしゃべり好きの隣人なので、いつも去るタイミングを逃す私。そのうち、カッコーはちゃんと鳴いてるの?からはじまり、鳥の話を延々しました。「隣のアレックスにも訊いたんだけどね、『さあ、分かんないなあ。意識して聞いてないから』って言われてね。エリカとパットだったら絶対分かると思ったの」
「もう2週間以上前から鳴いてるよ。毎日聞こえるし、特に夕方はよく鳴くよね」

それから、隣人の納屋に巣を作ろうと入ってきているのはツバメだけではなく、種類の違う鳥も出入りしていて、ときどき外でけんかをしているのだそう。「あの鳥の名前なんて言うんだったっけ」と言って、彼女の箪笥の上に置いてあった野鳥の一覧表を二人で眺めました。「ああ、この鳥だわ、胸元が黄色いの。シジュウカラね」

地域に暮らすって、こういうことなんだよね。ただ家を借りたり買ったりして、そこに間借りしているわけじゃない。同じ土地に住む人とあいさつを交わし顔なじみになって、少しずつお互いを知るようになり、いつの間にか自然にゆるくつながっていく。
お互い困ったことになったら、できる範囲で手を差し伸べる。一人暮らしでも独りじゃない。こんなに静かで、人口も少なく家が点在するような場所でも、いつもみんなの息遣いは聞こえる。何かあったら駆けつけてくれる人たちがいる。

夕刻時になったら、カーテンを閉めにまた隣人の家に行きます。

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2019.05.09 06:27|ワイルドフード
いつか、誰かから「アイルランドのゼンマイも食べることができる」と聞いたことがありました。
私は日本の住宅地で育ったのでいわゆる「山菜」というものが身近になく、テレビのニュースで山菜狩りを旬の行事として眺める程度でした。ですから、「ゼンマイ」という食べ物も聞いたことはあったし、大人になってからはそれがシダ植物の新芽らしいことも理解はしていたのです。アイルランドは雨量が多く、年間を通して湿度が高いせいか、じめじめとした土地を好んで自生するシダがとっても元気です。我が家の敷地内にも、垣根に沿った日陰や木の根元など、それこそそこらじゅうにシダが生い茂っています。

ゼンマイの収穫2018 (8)

シダ植物は最古の陸上植物として知られており、世界中にいろいろな種類のシダがあるそうです。我が家の周りでは、毎年同じ場所の同じ株から芽が出てきます。

ゼンマイの収穫2018 (5)

ぐるぐる。ぐるぐる。
まるでアート作品のようだと思いませんか。

ゼンマイの収穫2018 (10)

このらせん状のゼンマイは、英語で「Fiddleheads」と呼ばれます。フィドル=ヴァイオリンの頭、つまりヴァイオリンのスクロールに似ていることから来ているのですね。確かにそっくり。

ゼンマイの収穫2018 (6)

どんな種類のシダでも食べられるそうですが・・・この毛むくじゃらくんを摘むの・・・?
日本のゼンマイとは明らかに種類が違うようです。周囲の知人に訊いてみると「そうよ!茶色い毛を取るのがやっかいだけど、頑張って」と言ってくれたので、自信を持って収穫です。

ゼンマイの収穫2018 (4)

台所で作業する私をちらりと見るパットさん、しばし沈黙。
「・・・あまり食欲をそそる光景ではないね」

指先を上下させてこするようにするときれいに毛が取れ、つるつるの肌が見えてきました。時間のかかる作業です。ひいひい。
さあ、このあとは重曹とお湯を使ってあく抜き処理をします。

お湯がみるみる赤みを帯びてきます。しばらく浸けておいてから水を捨て、きれいな水に取り替えます。何度か繰り返し、1~2日すると水が濁らなくなるので、これであく抜きの完了。

ゼンマイの収穫2018 (2)

あ、食べられそうな姿になってきましたよ!

今回は初めての収穫だったので欲張らず、量は少なめ。友人から教えてもらったレシピにならって、日本人らしくしょうゆ漬けを作ってみました。

ゼンマイの収穫2018 (1)

ご飯に少し載せて食べてもおいしいとのこと。まさに和のお味!
残ったゼンマイは、パスタの具としてもいただきました。淡白だけど独特の風味でおいしかったです。不審がっていたパットさんも満足満足。

ブラックベリー、きのこ、木の実、イラクサ・・・アイルランド不定期便のブログでは、今までさまざまな自然の恵み、ワイルドフードをご紹介しています。無料(ただ)で食べ物が手に入るんだからお得よね、というコメントも聞いたことがありますが、私の中にこの価値観はありません。それよりも、ワイルドフードの収穫は自分の暮らす土地を自分の足で歩く機会を与えてくれます。自分の暮らす土地を知ることで育まれる愛着心。きれいな空気をたくさん吸って、いろいろな種類の野鳥のさえずりから鳥の名前をおぼえ、ご近所さんと道端であいさつ。自然と自分の接点を再確認させてくれる時間は、私の暮らしの基礎を作ってくれるのです。

それにしても、今回は下処理がちと大変でしたね。アイルランドのゼンマイ・・・また収穫するかな~。どうかな~・・・。

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2019.04.12 21:02|アイルランドで畑仕事
今年もツバメが帰ってきました。畑で仕事をしていたら、初めてカッコーを聞きました。長い冬が終わりを告げ、アイルランドに春がやってきました。

この冬、我が家は初めて野菜を買わず、初めて自分たちの畑の野菜だけで乗り切ることができました・・・!
私たちにとって、これはとても意味のあることです。それも、我慢をして辛抱して乗り越えたというより、あっさりとできてしまったのです。長年この土を耕し、肥やし、つながってきた末に得ることのできた、小さな幸せ。でも、とてもとても大きなこと。

4月の畑2019 (1)

食費が浮いたとか、節約、という価値観ではありません。自分の時間を使って仕事をし、その収入で見知らぬ野菜を購入する代わりに、自分の時間を使って、自分たちの土地で自分たちが食べるだけの野菜を育てることのできる幸せ。この時間の使い方を、大事にしたいと思います。

4月の畑2019 (10)

種を蒔くのが遅すぎたキャベツはまだ丸まってきてもいませんが、新しい葉は柔らかくおいしいので外側の大きな葉からもぎ取って、食べてしまっています。

4月の畑2019 (15)

去年の夏に種を直播きして、間引きもせずそのまま放置のにんじん。2メートル四方あるかないかの小さなスペースなのに、4月に入った今もまだまだ在庫が豊富です。大きいにんじんを見極めて、必要な時に必要な数だけ抜き取って使っています。

4月の畑2019 (13)

冬には頭部の葉が枯れていましたが、気温の上昇とともに新しい葉がどんどん出てきました。スープなどに入れてもおいしい。

4月の畑2019 (11)

去年の10月に植えたニンニクも、ぐんぐん葉を伸ばしています。キッチンには去年収穫したニンニクがまだまだあるから、収穫期を迎える夏まで十分に待てるのです。

4月の畑2019 (9)

おやおや、こちらは菜花?ケールがとう立ちして花が咲いてしまいました。野菜のとう立ちというとマイナスのイメージがあるかもしれませんが、私はわざととう立ちさせて花を咲かせます。花の近くまで寄っていくと、ありとあらゆる虫たちが、忙しそうに花の蜜を求めて集まってきています。中でも元気なのがミツバチ。養蜂をはじめてから、我が家の畑にやってくるミツバチの数が明らかに増えました。

4月の畑2019 (7)

虫たちのおかげで、野菜の花は結実し、やがて種ができます。このケールは私がわざわざ種を採取しなくとも、種が畑にこぼれて、しばらくするとあちこちで発芽してくれるのです。花が咲く前のものを摘み取って、おひたしにしたりそのままサラダにするとこれまたおいしい。春ならではの味がします。

4月の畑2019 (4)

花が咲く前と言えば、こちらもこのところずっと食べている野菜です。スプラウティングブロッコリーと言います。普通のブロッコリーと違い、こんな小さな蕾が放射状にできるので、これを摘んで食べます。子どもたちなどは、手でぽきっと折ってそのまま生で。摘めば摘むほど、どんどん出てくる嬉しい野菜です。

4月の畑2019 (3)

ビニールハウスの中ではいろいろな種類のレタスが元気。ルッコラやわさび菜、春菊なども。こちらも、こぼれ種で勝手に出てきたものが多いです。

4月の畑2019 (2)

アスパラガスは年々株が大きくなり、収穫量が増えてきました。この時期だけに食べられるごちそう。

じゃがいもと玉ねぎは去年収穫したものがまだまだある。
春は、イラクサなどのワイルドフードも収穫できます。
今年の畑に向けて、3月に蒔いたトマトやきゅうり、豆類などの種が次々と発芽し、サンルームの窓際を賑わせています。また楽しい季節がやってきました。

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今週はどんな記事を書こう?
畑のこと、紡ぎのこと、新しいレシピや週末のこと?書きたいことはいつも山ほどある、私の暮らしです。書きかけになったままの記事もたくさん眠っていて、ときどきそれを掘り起こしては新たに書き直すこともあります。何年も前の下書きだったりすると、言っていることがあいまいだったり今の私とはまるで違うものの考え方だったりして、人というのはいくつになっても少しずつ成長しているものなのだなあと感じ入ります。

今日はそんな過去の下書きから記事をひとつ。日付は6年前、短い記事ですが、今読んでもちょっと面白いと思ったので載せてみます。

アイルランドに暮らし始めて間もない頃、テレビやラジオでニュースを聞いていて「あれ」と気がついたことがありました。
殺人事件などの場合、被害者となった人の名前が挙げられますね。続けて、その人の年齢や出身地。
そのあとに「a father of three」、つまり「3人の子どもの父親でした」などというフレーズがつくことがよくあるのです。

残された子どもが幼かったりすれば、「殺された女性は5歳の息子を持つ母親であり・・」という報道がスタンダードです。

初めて聞いた時、これがとても新鮮でした。よくよく考えるうちに、これは社会が何を大切にしているかということの表れのような気もしてきました。
何者かによって殺された父。その子どもたち、彼の家族。殺人事件を淡々と伝えるニュースの中にも、このフレーズを聞くたびに一人の人の命の尊さ、かけがえのない人を無残にも失った、残された家族の心の傷を考えずにはいられません。悲惨な事件の報道は、それを伝えているようにも思えてきます。

事件の報道に思うこと
(みんなが観ているRTÉ1、6時のニュース)

日本で必ず言及されるのは被害者の職業ですね。「会社員」とか「医師」とか、「無職」、「主婦」などいろいろです。
アイルランドでは、著名人であったり事件との直接の関係がない限りは被害者の職業が報道されることはないので、日本のニュースを聞くと私は言いようのない違和感を覚えるのですが。

連日発生する事件の知らせは、つい聞き流してしまいがちです。でも、被害者が「3人の子どもの父親」や「5歳の息子を持つ母親」であるという報道は、私たちの想像力、すなわち思いやりや他者をいたわる心をそれとなく育んでくれるように思います。

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2019.03.30 02:30|ワイルドフード
スイバ?何それ?なじみのない名前です。私も今回記事を書くまで、この日本語名を知りませんでした。
英語ではSorrel(ソレル)。いくつか種類があるようですが、中でも定番のCommon Sorrelは、私たちの家の周りでも簡単に見つけることができます。スイバは、食べられる野草です。

日本では野生のスイバの新芽をとって食べるそうです。春の山菜のひとつですね。
アイルランドでは、ピューレにしたり魚料理の添え物にしたり。初春のスイバは葉が柔らかいので、グリーンサラダとして食べてもおいしいのです。

さあ、家の裏の土地をてくてく歩いて、スイバを摘みに行こうっと。

3月の畑2019年 (2)

遠目ではただの草地に見えても、実際に歩いてしゃがんでよーく観察してみると、実にさまざまな植物が共生しているものです。タンポポやデイジー、キンポウゲ。数種類の苔やイグサ、イラクサの姿もあります。

そしてそんなところに・・・

スイバの収穫 (3)

発見。スイバもありました!
子どもたちも食べられることを知っているので、小さい頃からスイバの葉を見つけてはむしってもぐもぐ食べています。

苔やアイヴィーの葉に混じって、低い石垣の上にも群生していました。わーい。

スイバの収穫 (2)

きれいな葉を摘んで、一人でゆっくり食べるランチ用にサラダを作ります。昨日のディナーで残ったローストポテトを、オリーブオイルを使ってフライパンで加熱し、シンプルランチの完成です。
さて、お味は?

スイバの収穫 (1)

うーん、レモンのように酸っぱい!私はビニールハウスの中で摘んできたルッコラやレタスと一緒に食べたので、スイバの酸味が強すぎずちょうどよかったです。
スイバは「酸い葉」だそうで、その酸味で有名なのですね。

私たちの食品は、何もお店で買うものばかりではありません。ふと足元を見れば、食べものは自然の中にもある。そんな自然の恵みを、一つ一つ発見していく瞬間、味わう時間というのは楽しいものです。たとえ糸のように細くとも、自然と自分がつながっていると思える時。いつもの見慣れた風景が変わってきます。
スイバのサラダ、もっと作ろうっと。

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望月えりか

Author:望月えりか
書く人。日々の暮らしの様子をエッセイにしてお届けしています。
2004年よりアイルランド人の夫、一姫二太郎と4人でアイルランド西部の小さな村に暮らしています。
アイルランドの自然と伝統音楽に囲まれながらオーガニックな野菜作りと食生活、農家さんの羊毛で糸紡ぎ。アイルランド伝統音楽プロジェクト「ブラックバードミュージック」運営。フィドルを弾いたりフルートを吹いたり。
著書「見飽きるほどの虹 アイルランド 小さな村の暮らし」(出版舎ジグ)
新聞、雑誌等プレスへの寄稿文依頼はirishcountrylife@gmail.comまでお問い合わせください。

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